株式会社シーピーユー

会社で運動をやっている方はどのぐらいいらっしゃるでしょうか?

スポーツジムの会員数は、日本の全人口3%ほどと言われておりますが、社内で定期的に運動をしている方を把握していらっしゃいますか?

近年増加傾向にあるメンタルヘルスに関するキーワードとして、プレゼンティーイズムという言葉があります。

プレゼンティーイズムとは、「病気ではないけれども心身の調子がすぐれず、パフォーマンスが低下してしまう状態」のことをいいます。決して仕事をサボるわけでもなく、むしろ頑張ろうとしているのに生産性が上がらない状態がプレゼンティーイズムです。

一般的には、花粉症などのアレルギー症や頭痛、軽いうつ病などがプレゼンティーイズムの原因となります。また、アブセンティーイズムとは、欠勤や遅刻など、会社におらず働けない状態を表します。

いままで企業ではアブセンティーイズムの方が目立つことから、遅刻欠勤しないような対策を立てることが多かったと思いますが、実はプレゼンティーイズムによる生産性の損失は、アブセンティーイズムを遥かに上回ることが米国の研究で報告されています。

プレゼンティーイズムは非常に可視化が難しいものですが、単純に風邪をひいた時に健康時と同じパフォーマンスが出せるかと聞かれれば、たいていの人は「ノー」と答えるでしょう。

なにもかもコストで計算するのが正しいとは思いませんが、プレゼンティーイズム時の生産性が通常時の80%で、年間3か月その期間があると仮定した場合、費用対効果で考えれば大抵の企業ではプレゼンティーイズムを防ぐための投資は惜しまないのではないでしょうか。

仮に複数の社員が軽いうつ病で生産性が低下してしまっている場合、ストレスチェックを行い、対策をうった方がよほど得になると思います。

実は、見えないコストであるプレゼンティーイズムを解決する手段としても健康経営は注目されています。

ストレスチェックやコミュニケーションの活性化によるメンタル面でのフォローはもちろんのこと、禁煙奨励や運動会、体操などによフィジカル体面でのフォローを行うことによって、プレゼンティーイズムを未然に防ぐことができます。

企業が取り組むフィジカル面でのフォローに関しては、まずは「運動」と「健康」の相関性を正しく知る必要があるのではないでしょうか。

運動は健康に良い、というのはすでに社会常識になっていると思いますが、一般的には体力が向上するから、とか、汗をかいて気分がすっきりするからなど、比較的ぼんやりとした理由しかご存じないのではないでしょうか。

また、あまり運動を行わない方も、はっきりとした理由が分からないから取り組まない、なんてことも見受けられます。

週2時間半の運動で糖尿病や心臓病、脳卒中などのリスクが低下

カナダのクイーンズ大学の運動疫学の教授イアン ヤンセン氏が行った運動と身体活動の頻度や時間と、2型糖尿病や心臓病、脳卒中などのリスク要因との関連調査によると、2007年から2011年の4年間の調査の結果、1週間のうち運動や身体活動を行う時間の合計が150分を超えていれば、まとまった時間をつくって集中して運動やスポーツに取り組んだ場合に比べ、ほぼ同等の効果を得られることが判明したというレポートが上げられています。

ヤンセン氏は、「運動する習慣がない人や、運動する時間を作れない人でも、細切れの短い時間で良いので、運動や身体活動に費やす時間をつくれば、十分に効果を得られることが分かりました」と言います。
これはつまり、月曜日から金曜日までまったく運動をしなかった人が、週末にまとめてウォーキングを行った場合と、1日3回10分間の運動を週5日行った人でも、運動の恩恵は同等に得られるということです。

「運動は続けることが大切です。生活スタイルに合わせて、短い時間でも良いので、ともかくも運動をする時間をつくり、それを貯めていくことをお勧めします」と、ヤンセン氏は強調しています。

国も認める運動の効果

厚生労働省の調査によると、身体活動量が多い者や、運動をよく行っている者は、総死亡、虚血性心疾患、高血圧、糖尿病、肥満、骨粗鬆症、結腸がんなどの罹患率や死亡率が低いこと、また、身体活動や運動が、メンタルヘルスや生活の質の改善に効果をもたらすことが認められています。更に高齢者においても歩行など日常生活における身体活動が、寝たきりや死亡を減少させる効果のあることが示されています。

また、「日頃から日常生活の中で、健康の維持・増進のために意識的に体を動かすなどの運動をしている」人が、男性 52.6%、女性 52.8%となっており、現在国の指針として、この数値をさらに10%引き上げることが目標とされています。

さらに、「身体活動量を増やすためには、状況に応じて、通勤・買い物で歩くこと、階段を上がること、運動・スポーツを行なうことなど身体を動かすことを日常生活に取り入れることが必要である。この実践のためには、前段階として身体活動や運動に対する意識の向上が必要」と続き、具体的な方法として疫学的見地から「1日1万歩」歩くことが推奨されています。

日本人の歩数の現状は、1日平均で、男性8,202歩、女性7,282歩であり、1日1万歩以上歩いている者は男性29.2%、女性21.8%となっており(平成9年度国民栄養調査)、これから歩数の1,000歩増加を国は目指しています。1,000歩は約10分の歩行で得られる歩数で、距離としては600~700mに相当します。
これなら少しの心がけでも達成できそうですので、ぜひトライしてみてください。

ウォーキングによる心理的効果

国土交通省が発表した資料に、蓑内豊氏の調査によるウォーキングの心理的効果が記載されています。
調査の結果、60分のウォーキングを行うことにより、緊張感の低下、抑うつ効果、活力の向上などが見られています。

また、筑波大学の研究によると、精神的ストレスをかけた後の運動は作業の能率を向上させるという結果が出ており、運動はメンタル面においても効果を発揮することが証明されています。

運動は不安を取り除く

メンタル面への運動の効果の研究として、カナダで面白い実験が行われました。
カナダのクイーンズ大学のアダム ヒーナン氏(臨床心理学)は、66人の学生を2つのグループに分け、片方にはウォーキングやジョギング、トレッドミルによる運動を10分間行ってもらい、もう片方には座ったまま過ごしてもらい、続けて、コンピュータの画面に3D動画を表示し、その動きを観察してもらう心理テストを行いました。

3D動画は、15の点を人間の体を思わせる形に配置し、動かすというもので、このキャラクターの動きは非常にあいまいで、こちらへ向かって歩いてくる、あるいは離れていくように見える仕掛けになっていました。
なお、ストレスや不安を感じている人がこの動画をみると、キャラクターが近づいてきているように見える傾向があるとのこと。

実験の結果、運動を行ったグループでは、「キャラクターが離れていくように見える」と答えた人が多く、逆に運動をしなかったグループでは、「近づいてくるように見える」と答えた人が多くあらわれました。

ヒーナン氏は、「「物の見方や感じ方は、心理状態に大きく左右されます。不安を抱えている人は脅威を敏感に感じとり、世界をより危険なものと認識してしまう傾向があります。運動にはストレスを解消し、不安感を取り除く効果があるという経験的な証拠を掴むことができました」と述べています。

うつ病への効果も期待

アメリカのデューク大学でも、運動とストレスの関連について156人うつ病患者を対象に、薬物と運動がそれぞれどのような効果を上げるかという興味深い調査を行っています。

うつ病の薬物療法を受けている患者を、運動をまったくしないグループと、ランニングマシンによる運動をするグループに分け、どのような変化が起こるかを観察しました。
実験は16週間続けられ、運動に取り組むグループは、ランニングマシンによる1日30分の運動を週に3回行いました。

その結果、うつ病の治療効果はすべてのグループでもみられましたが、症状の発現率は、薬物療法を行ったグループでは38%だったのに対し、運動を行ったグループでは8%にまで減少していました。

デューク大学のジェームズ ブルメンソール氏(心理学)は「運動はうつ病の治療にも効果的で、効果が長続きすることが分かりました。運動を続けた人では、うつ病の症状を再発する割合も低かったのです。メンタルヘルスには、運動を取り入れるべきでしょう」と、述べています。

また、別のデータでも、うつ病に対して運動療法の効果が抗うつ薬と同程度に出ている報告が発表されています。

筋トレは糖尿病の予防にも効果的

米ハーバード大学公衆衛生大学院客員研究員のAnders Grontved氏らの研究チームは、男性医療従事者(40~75歳)およそ5万人を対象とした追跡研究のデータから、1986年の登録時から1990年までに糖尿病、がん、心筋梗塞、脳卒中などにかかったことがない3万2,002人を対象に調査しました。

1週間あたりの筋力トレーニング量および歩行や水泳などの有酸素運動量を1990年から2008年まで解析し、18年にわたって追跡したところ、2,278人が糖尿病を発症しました。
解析の結果、日常的に筋力トレーニングを行うグループではそうでないグループに比べ、2型糖尿病発症リスクが34%低下することが判明し、筋力トレーニングは有酸素運動とは独立した2型糖尿病予防の因子になっていたことがわかりました。

運動量別にみると、週150分以上の筋力トレーニングを行うグループでは2型糖尿病発症リスクは34%、60~149分間行うグループでは同25%それぞれ低下し、運動時間の増えるほど減っていくこともわかりました。
また、筋力トレーニング量が週に59分未満と少ないグループでもリスクは12%低下しており、少ない運動量でも効果が得られることが明らかになりました。

一方、有酸素運動を週に59分未満行うグループでは2型糖尿病のリスク低下は7%で、60~149分間のグループでは31%、150分以上のグループでは52%のリスク低下となっていました。
Grontved氏は「これまで2型糖尿病予防には有酸素運動が重要とされてきた。しかし、いきなり有酸素運動をはじめるのに難しいという人は多く、継続するのも困難だ。しかし今回の研究で、2型糖尿病を予防するためには、筋力トレーニングは有酸素運動の代替手段になりうることがわかった」と解説しています。

まとめ

運動の健康に対する効果の研究はたくさんの分野で行われており、様々な結果、報告が挙げられています。

ここでご紹介したものはあくまでも一部で、運動する時間や内容など、諸説ある状態ではありますが、運動そのものが健康に害があるという報告は一つもありません。
また、比較的短時間の運動でも、病気のリスクが低下するなど十分な効果があるという報告が多いことも特徴です。

まずは1日10分、カラダを動かしてみませんか?