最近よく話題になる「ブラック企業」という言葉。いま現在働いている人だけでなく、これから就職していく学生も気になっていることでしょう。
企業としても、巷では”ブラック企業の見分け方”や”ブラック企業と思った時の対処法”、”ブラック企業の特徴”などという情報がかなり多く出ており、以前と比べかなり意識してきているのではないかと感じています。
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ブラック企業の定義と特徴
実は、ブラック企業の定義というものはいまのところ存在しません。
直近では、厚生労働省が法令違反を起こした企業を「労働基準関係法令違反に係る公表事案」として発表しており、ここに掲載されている企業をブラック企業と呼ぶ人もいます。
http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/151106.html
ここに掲載されているケースでは、安全・衛生に対する配慮の違反、違法な長時間労働、賃金未払いなどが多く、ブラック云々の前に死の危険があるような状況ですので、個人的には論外と感じています。当然ですが身の危険を感じるような会社はいますぐ辞めることをお勧めします。
上記のような論外の企業はともかく、一般的にブラック企業の特徴として言われていることは
・長時間労働が当然
・大量採用、大量離職
・パワハラやセクハラだらけ
・社員を使い捨てにする
・給与が不当に低い、残業代がない
・精神的に追い詰められる
などです。
これだけ見ると確かに、こんな会社では働きたくないなぁ…と思いますが、実際のところたいていの企業で多少は存在しているのではないでしょうか。
現実は?
ここ数年は多くの企業で人不足に陥っており、社員を使い捨てにする会社は淘汰されることは間違い無いでしょう。
いまのところ実際に企業で行われていることは、
・労働時間の短縮
・パワハラ/セクハラの撲滅
が多いように感じます。
労働時間の短縮として、PCを一定の時間で使えなくさせる措置や、管理システムを使える時間を制限する、オフィスを決まった時間で施錠してしまうなど、様々な取り組みを行う企業が増えてきていますが、これはこれで問題と感じる社員が多いのです。
なぜなら、皆もっと仕事がしたいと思っているからです。
私が真面目な人ばかりにお会いしてきただけかもしれませんが、たいていの人は成果を上げることは自分の満足につながっており、顧客に喜んでもらうためには惜しみなく自分の力を使おうとします。
創意工夫をもって仕事に取り組む方は様々なことを試したいと思うでしょうし、より良いものをつくろうとすれば時間はどうしてもかかります。
また、業務量は変わらないのに業務時間だけ減らされても、仕事がうまくいかなくなってしまいます。
優秀な企業は、業務時間の削減と業務効率化の術を同時に提示し、なるべく負荷がかからないような配慮をしますが、効率化にも限界はあり、そもそももっと仕事がしたいと考えている人にとってはあまり効果的ではないように思います。
パワハラについては、モチベーションや離職率に密接に関わっているため、問題があると感じている企業は徹底的に対策をするべきです。
当社では組織診断を行うことが多いのですが、典型的なパワハラ組織は従業員からのアンケートだけで明瞭にわかります。
これは、部下から具体的なパワハラ事例の申告があるという話ではなく、アンケートの結果、上司が自分はマネジメントできていると思っているが、その部下はマネジメントされていると感じていないケースから容易に見てとることができます。実際にヒアリングすると、上司から一方通行のコミュニケーションになっており、部下はそれに対して非常にストレスに感じている状態の組織のことがほとんどです。
このようになってしまっている上司部下関係が多い組織は離職率が高い傾向にあるので、思い当たる節があれば要注意です。
また、そもそもパワハラ型のマネジメントは意味がないように感じます。大手企業ではパワハラ対策をしっかりしているところも多く、暴力沙汰などはさすがに見かけませんが、そもそも仕事を真面目に考え、成果を挙げようと創意工夫している方からすれば、論理的ではない指導や発言はほとんど意に介さないと思います。また、数字が悪い時に感情的な指導をされても、指導される側はどう思うのでしょうか。私なら感情的になりたいのはこっちだ!などと思ってしまうかもしれません。
パワハラは職場の環境や雰囲気の悪化という面では撲滅すべきものですが、パワハラを恐れてマネジメントが緩くなっては元も子もありません。企業はパワハラの基準や禁止事項を明確にするだけでなく、誰に対してどのようなマネジメントスタイルが良いのか、本当にマネジメントするべきことは何かなど、提示する必要があります。
なお、セクハラはなくすべきものであり、これは論を待ちません。
見えないブラック企業
労働環境面でのブラック企業は確かに存在します。前述したように、いま世の中にたくさんある情報から見分けることもできますし、知っておくことは大事なことです。
ただ、営業組織において、実際にブラック企業と感じる特徴は他にもあります。
それは、
・成果を上げるマネジメントが出来てない放置型営業組織
または
・与えている戦略戦術が的外れな営業組織
です。
仕事においてモチベーションや積極的な営業マインドは非常に大事ですが、これは成果を上げることで自然に高めることができます。当然、評価制度や報酬体系がある程度整備されている必要はありますが、会社としての戦略や戦術がなく、個人に売上向上を押し付ける企業はブラックだと感じます。
もちろん、売上向上は個人個人の営業が考えるべき、という意見や、見よう見まねで覚えていくもの、という意見もあると思いますが、それは能力が高い人、成長意欲の高い人の意見であり、全ての社員に求めるのは難しいものです。ローパフォーマーに照準を合わせる必要はないにしろ、個人の成長を完全に個人任せにするようでは、組織としての存在意義に疑問を感じざるを得ません。そんなに簡単に期待通りに人は成長するものではありません。
また、的外れな戦略戦術を与えられたとしても、たいていの人は真面目にそれをこなそうとするため、結果肉体的にも精神的にも疲弊してしまいがちです。そこでさらに成果が上がっていないと怒られたりしたら、真面目であればあるほど仕事に対する意欲はなくなり、得られるものも何もありません。
労働環境など目に見えるブラックな部分は無くとも、このような悪循環に陥っている企業で働いていると自身のキャリアや成長に悪影響を及ぼしてしまい、無駄な時間を過ごしてしまうことになります。
つまり、自身にとって成長できる環境ではない会社を「ブラック企業」と思うべき、ということです。
これは何も成長意欲を強く持て、という話ではありませんし、企業や組織に責任を押し付けるような話でもありません。働いていれば嫌でも年齢相応な能力は求められます。若い頃は良くても、誰でも年は取ります。自分自身に起きる当たり前の問題であり、良い意味で相応になることは誰でも望むことではないでしょうか。
そのためには、格別成長意欲を高く持たずとも、成長できる環境に身を置くことは個人個人にとって非常に大事なことです。逆に言えば、働いて良かった、と思われる会社は自然に個人の成長が出来る環境が整っている会社なのでしょう。
まとめ
私見ですが、夜遅くまでオフィスに光が灯っているだけでブラック企業と判断するのは早いのではないかと思います。
その中には、自分のため、顧客のためなど、楽しんで仕事をしている人たちも必ずいます。
ブラック企業かどうかというのは、結局そこで働いている人たちがそう思うかというところに帰結することが多く、単純に世間で言われていることを鵜呑みにし、労働時間や条件だけで判断するのは自己の成長の妨げになるかもしれません。
決して長時間労働や離職率が高い企業を勧める訳ではありませんが、厳しい環境は成長する良い機会になり得ます。自分の中でブラック企業の定義を明確に持ち、どのような企業であれば自分が成長できるか、いま自分が所属している企業で成長できるか、どうすれば成長できる環境にできるか、もしブラック企業について考えることがあればこのようなことを念頭に置いて考えてみてはいかがでしょうか。