人財マネジメントの観点から見た健康経営

近年経営手法の一つとして高い注目を集めている健康経営は、取り入れている企業が増加していることからも様々なメリットがあることは間違いない。

今回は、人財マネジメントの観点から、健康経営のメリットをお伝えしようと思う。

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「人=コスト」とみなす企業の末路

これまでは、例えば企業の決算説明会などで「人」の話題がでる場合、大抵「人件費削減」という意味で使われることが多かったのではないだろうか。例えば「コスト削減のため非正規社員の採用をすすめた」「早期退職優遇制度を導入した」などである。

しかし、少子高齢化が確実に進行し、間違いなく人口構造に変化が起こることが予測されている中、「人=コスト」の考えは将来的に間違った経営感覚となる可能性は非常に高い。

つい最近も、長時間の過重労働により従業員が倒れ、店が開けられない状態に陥った飲食店が話題になったが、問題は店が開けられないことだけではない。

…果たしてこのような企業が採用をかけたとして、人が集まるだろうか。

現在の就職戦線は売り手市場であり、再来年卒業予定の学生のデータを収集している企業さえある状態だ。実際に人財不足による倒産も起きている。
※2015年の倒産件数は前年比9.4%減と減少した一方、「人手不足」関連倒産は同5.6%増と増加-商工リサーチ

大手の企業が積極的に採用をかけている現在において、あおりを受けるのはその業界の中堅企業や中小企業である。もともと少ないパイの中で良質な人財は大手に奪われてしまっており、採用基準を甘くしなければ誰も採用することができない状況である。

上記のようにただでさえ厳しい環境の中、いわゆる「ブラック企業」のレッテルが貼られた企業の採用が難しいのは自明の理である。非正規社員を多く採用し、人を使い倒した結果、会社自体が倒れる可能性が高まったことは、「人=企業そのもの」と捉えるべきであることを示唆しているのではないだろうか。

終身雇用の崩壊による正社員に求めることの変化

かといって正社員登用を増やしただけで問題が解決するかといえば、そうでもないのではないかと筆者は感じている。

というのも、昔のように正社員に使命感や忠誠心を求めることが難しい時代と思われるからだ。
終身雇用が守られていた時代は、社員に対してある程度の犠牲を強いることは、暗黙の了解として通用していた。また、労働力の流動化が活発でなかったため、転職しようにもできないという壁により、悪く言えば「足元を見て」忠誠心を強いることも可能だった。

しかし、現在は少子化による採用難だけでなく労働力の流動化も進み、一方的な会社都合の命令を下し続けることは退職に直結し、大きなリスクとなっている。正社員の使命感や忠誠心をモチベーションとする企業の在り方は将来的に通用しないだろう。

モチベーションの源泉をどこに求めるべきか

今も昔も、新入社員が3年で退職するという問題は存在している。理由は時代により多少異なるであろうが、基本的には新人にモチベーションを保たせることができないことが原因と思われる。

アメリカの経営学者コトラーによると、現在はマーケティング4.0、自己実現の時代とのことである。これは、顧客に対してだけでなく、社員にとっても同じであろう。
同じくアメリカの心理学者マズローによると、欲求には5段階あり、自己実現の欲求を満たすためには、その他4つの欲求を満たす必要がある。

第1段階の「生理的欲求」に関して問題がある企業はおそらくないであろうが、その他の欲求に関しては、コミュニケーションが欲求を満たす鍵となることは間違いない。
多くの企業がコミュニケーション活性化を積極的に行う理由はここにある。

 

 

 

 

人財を定着させる「働く環境」に関する課題

現在は人財に関して企業にとって大変困難な時代であるが、この変化が早く激しい時代において、新卒採用をせず、若くて新しい血を入れないという選択は難しい。

また、中途採用に関しても、能力が高い人財を自社に取り入れるチャンスであると捉えれば、活かせるものなら活かしたい。そして、採用した人財は定着してもらわなければ困る。
定着させるためには、その1で登場したマズローに従えば、5段階の欲求を満たす、もしくは満たせる環境を作る必要がある。

環境については、最近はワークライフバランスという言葉が浸透してきているように感じる。労働時間に関する問題が顕在化していると言い換えてもよいであろう。
特に日本は労働時間と生産性が反比例しており、ワークライフバランス云々に関わらず長時間労働に対してはいい加減考えなければならない。

朝型勤務の奨励など、長時間労働の抑制に取り組み、成果を上げ始めている企業もあるが、無理やり「ノー残業デー」を設定し、逆にサービス残業が増えているケースもある。また、働く側も長時間労働に慣れてしまっていることもあり、この慣習を変えることはある程度長いスパンで取り組む覚悟が必要であろう。

但し、上記の5段階の欲求を満たすことができれば、必ずしも長時間労働自体が問題にはならないと筆者は考える(もちろん常軌を逸した長時間労働は別だが)。

人財問題を解決する手法としての健康経営

いままで述べた課題を解決する手法として注目されているのが健康経営である。

健康経営は企業の生産性を高めることが目的と言われているが、大きなポイントとしては
・健康増進による「安全の欲求」の満足度向上
・経営層が従業員の健康を意識することによる「所属の欲求」の満足度向上
・(運動会などの施策を行う場合)コミュニケーションの活性化による「所属の欲求」の満足度向上/仕事以外で自己を発現する「自我の欲求」を満たす場の提供
・体力増強による仕事の能率向上(欠勤率低下も含む)
・医療費低下による財務体質の改善(主に大企業)
・近年増加傾向にあるメンタル疾病による訴訟リスク回避
で成り立っており、これらが総合して「生産性向上」に結びついている。

健康経営は、人財マネジメントの観点において、内面的には社員の定着率向上、外面的には自己実現を満たせそうな企業として、採用に対して効果を発揮する経営手法である。

現在上場企業では健康経営銘柄の設定などの取り組みを国が行っていることもあり、健康経営に興味を持つ企業が増えている。中小企業においても、経産省、経団連が協力して健康経営に取り組んでいる企業に対して融資が有利になるなどのメリットを付加し、推進していく動きが出てきている。

最後に、人財マネジメントにおいて課題を感じている企業は、ぜひ一度健康経営に興味を持って頂きたい。
健康経営に関して、特に当社が推奨していることは、「フィジカル面」でのアプローチ。
わざわざスポーツジムに行くのではなく、会社の中で出来ることもたくさんある。
是非、ご用命いただければ、フィジカル面はもちろん、「健康」のプロフェッショナルが訪問、アドバイスさせて頂きます。

※健康経営は、健康経営研究会の商標登録です。


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