本社—支社間における戦略浸透の構造的課題

企業が各地に支社を置けるような規模に成長することは大変喜ばしいことです。ですが、規模が拡大するということはそれだけ経営層と現場の距離が遠くなることを意味しています。

当然ですが、距離が伸びれば情報の欠損率も上がります。売上などのデータはともかく、本社からの戦略や方針の発信、現場の実情や課題、ともにどこまで正確・詳細に伝達されるかは、各層のマネージャーが鍵を握っています。
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潜在的な課題把握の必要性

組織が大きくなればなるほど、業務は細分化される傾向にあります。各々が各々の職分に尽くすことは大変素晴らしいのですが、いわゆる「縦割り」になり、コミュニケーションが希薄になってしまうことがよくあるように見受けられます。実際に本社の一部の人と支社の一部の人がコミュニケーションをしているだけになっており、現場を把握している本社の人間は一握り(しかも一部の現場だけ!)ということになっていませんでしょうか。

そもそも本社と支社ではマネジメントする領域が異なりますので、システムを含め「仕組み」で情報共有を行うのが一般的ですが、仕組みでは顕在的な課題しか抽出できない場合が多いように思います。実際には現場の課題というものはかなりデリケートなもので、人が介在しないと確認できない潜在的な要因が多く含まれています。戦略が浸透しないという顕在的な課題の原因は潜在的な課題にあることがほとんどですから、顕在的な課題に対する本社の打ち手は「上っ面」の解決策になり、現場からすると「本社は分かっていない」などと思われる原因になってしまいます。そのようなことが続けば、いつしか本社戦略はスローガンとしか捉えられなくなってしまうでしょう。

鍵を握るのは中間マネジメント層ですが…

本社戦略が現場にまで浸透していないと感じている場合、原因が戦略を現場に浸透させる中間マネジメント層にあるのか現場にあるのか確認しなければなりません。どちらに原因があるにせよ、本社を完全に無視するということは考え難いことですから、どこかに本社から見えていない潜在的課題があるはずです。そして潜在的な課題は、人と人が向き合わなければ抽出することは困難です。つまり、現場の課題把握の正確性は支社の中間マネジメント層の能力に依るところが非常に大きいのです。もちろん現場の実態が不正確なまま本社戦略を立案するべきではないことは自明の理です。

また、中間マネジメント層が本社の戦略や方針を正しく理解するには、経営視点など大きな視点が必要になりますが、このような視点の高さや広さも現場への戦略や方針の浸透度を左右する要因になります。本社の戦略立案と現場への浸透のために、中間マネジメント層は現場と本社の両方に対して様々なスキルが必要です。

従って、中間マネジメント層の強化育成は非常に重要ですが、彼らが

・現場の顕在/潜在課題を明確にする

・短期的視点から脱却し経営視点も持つ

・双方に正しい情報共有を行う

ということは、すぐにできることではないというのが素直な感想ではないでしょうか。また、相対的に見ても、上記ができるマネージャーは相当優秀な存在です。

本社—現場ラインの構築

一般的には現場のマネジメントは支社が行い、支社のマネジメントを本社が行うのが筋であり正しい姿です。つまり本社↔支社↔現場といったレポートラインがあるわけですが、本社戦略を浸透させるためにはこのラインだけでは足りません。本社↔現場の直通ラインが足りていないのです。

支社が間に入っているにしろ、現場とは直線的につながっているから良いではないか、と思われるかもしれませんが、情報の欠損という観点以外にも当社の経験では本社・現場互いに距離を感じているケースが非常に多いです。本当に本社戦略や方針が現場にまで浸透されているのであれば、中間マネジメント層がどうであれ、お互いに距離を感じることは少ないのではないでしょうか。

結論として、最短で本社—支社間の戦略浸透・情報共有の課題を解決するためには、本社—現場ラインを構築し、本社と現場の距離感をなくすことが有効です。

戦略や方針の現場への浸透の後追いまで本社が行うことで、

本社スタッフには

・現場のリアルの把握
・現場に至るまでの責任感の醸成

現場には

・戦略や方針の正しい理解
・スピード感のある戦略実行
・本社との一体感

中間マネジメント層には

・本社戦略や方針の本来の効果の確認
・本社が求めるマネジメントの在り方の伝達

という効果があります。

この本社—現場ラインは一過性のものでも構いません。中間マネジメント層の強化育成ができたら解体や別の形にすれば良いのです。もしこのような課題を感じており、解決しなければならないと本気で考えているのであれば、本社側は誰かの責任にするのでなく、自ら動いていくことがベストではないでしょうか。

まとめ

・本社の戦略や方針は現場の潜在的課題まで解決できるか確認する

・最短の解決策は本社—現場ラインの構築

・本社—現場ラインを構築と中間マネジメント層の強化育成を同時進行で行う

・本社、支社、現場すべてがお互いに理解しようとする意識を持つ

 

でも現実にはそんなことができるリソースは本社にはないよ、という場合に当社がお勧めするのは、ちょっとだけイノベーション、略して「ちょイノ!」です。

最初は支社や現場を絞って効果検証を始め、成果が出始めたら拡大すればよいのです。

まずは現場の実態をどれくらい把握できているか確認してみましょう!


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