会社を元気にする『ウエルネス・ロジック』その1

モチベーションの低下だけでなく、病気の原因にもなるダブルバインド(二重拘束)。もともとは精神医学の研究者、グレゴリー・ベイトソンによる造語です。
本来使われている意味としては、「異次元の相矛盾する二つのメッセージを受け取った者が、行動不能に追い込まれた状態」のことを指し、主に家族関係という抜き差しならぬ関係の中で成立するものとされています。
具体例で説明しますと、例えば「母親が子供に(実際は偽装の)愛を示し子供が近寄って行く」と「母親が身をかわす」というような場面で、「母親の愛」と「母親の身のかわし」の相矛盾する二つのメッセージを受け取った子供は混乱し、どちらのメッセージに反応したら良いのか分からなくなってしまう状況がダブルバインドです。

抜き差しならぬ関係、という点では、仕事における上司や顧客という関係に非常に似ていると感じます。

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役割分担と判断基準のダブルバインド

当社では常日頃から、組織の課題には「役割分担」と「判断基準」があるということをお伝えしていますが、これはダブルバインドの大きな原因となります。

役割分担のダブルバインド
誰が何をやるといった作業分担はもちろん、短期・中長期の視点で誰が何をするべきかといった役割分担は組織の上では非常に重要です。
多くの会社で、短期と中長期のやるべきことを同時に現場に与えている状況を見受けます。マネジメント層も、売上達成から部下の指導育成まで、「まるっ」と役割とされている方も多いように感じます。
また、現場の役割が個々の売上目標を達成することとしている会社がほとんどですが、同時にソリューション営業や顧客の課題解決などを行えという指示が出ている状況があります。

売上目標達成というのは顧客側ではなく会社側に「矢印」が向いている状態です。顧客に向かって、我が社の売上目標達成のために買ってください、という方はなかなかいません(関係性が出来ていれば別かもしれませんが…)。

逆にソリューション営業は顧客に「矢印」を向けていますが、例えば顧客の課題が解決しましたが我が社の商品は売れませんでした、という報告を会社にしたいと思う現場の方もなかなかいないでしょう。
かと言って、いいから売ってこい!という姿勢は超会社都合の押し売りですから、このご時世厳しいことは間違いありません。

相当仕事が「デキる」方ならともかく、現場の売上目標達成という役割だけでも、正反対の方を向いた2つの「矢印」に引っ張られているダブルバインドの状況はよく見かけます。

 

判断基準のダブルバインド

商品の値引きの判断や、交渉の限界など、会社によっては様々な判断基準が定められていると思います。しかし、現場で起きることは様々で、事前に規定された基準だけでは判断がつかないことや、事情により正悪の判断が逆になることもしばしばです。

また、上司により考え方が異なっていたり、その場その場で言うことが異なる方もいるので(本人は無自覚でしょうが)、結局会社の判断基準はその上司の基準だった、などということもよくあります。
これも役割分担同様、顧客、上司、売上目標などにダブルもしくはトリプルバインドされた状況に陥りやすく、混乱のもとになってしまいます。

また、役割分担が出来ていたとしても、判断基準がバラバラであれば、結局その役割を全う出来ているかがわからなくなってしまいます。役割分担と判断基準は必ずセットでなければなりません。

理想の組織とは

役割分担と判断基準が明確な組織 − それが理想の組織です。現場も上司も迷うことなく仕事に専念できる環境です。では、それぞれがどのような役割を持ち、どのような判断基準があればよいのでしょうか。
そのキーワードは、関係性構築です。

 

関係と関係性の違い

 

よく、顧客との関係性を構築しよう、と言われることがあると思います。
「関係」と「関係性」。似ている言葉ですが、当社ではこの2つを明確に違うものとして考えます。
例えば、「上司」と「部下」。これは関係です。「顧客」と「営業」。これも関係です。では、関係性とは何でしょうか。

関係性とは、「期待値を超え続けた関係」と当社では定義します。

期待値とは、例えば顧客や上司がAさんに何かを依頼した際、Aさんならこれくらいの仕事をこれくらいの早さで、これくらいのクオリティでやってくれるだろうという、相手の頭の中で勝手に想像される期待です。
この期待値を超えなければ、相手からは当たり前だと思われ、上回ることにより、信頼を得ることができます。一定の期間にわたって期待値を上回り続けることにより、初めて関係は関係性になるのです。

そしてこの顧客との関係性は、すべての課題を解決します。

 

現場営業とマネジメント層の役割

 

当社が考える理想の組織の現場営業の役割は、顧客との関係性構築を行うことです。先ほど「矢印」の話をしましたが、現場は常に顧客の方を向いている状態になっていることが理想と考えます。売上目標達成のため、上司に怒られないためなど、会社の方にも矢印が向いている状態はダブルバインドとなり、現場は混乱します。顧客との関係性を構築するためにどうするか、ということだけ考えることにより、現場は最大の力を発揮し、結果売上がついてくるのです。

マネジメント層の役割は、現場が顧客の方だけを向く環境を構築することです。環境とは、体制や制度、雰囲気などを含めたすべてを指します。決して売上ノルマを押し付けることでもなく、不必要な部分まで厳しく管理することでもありません。

 

そして重要なのが、判断基準です。その役割を全うしているかどうか、それを判断する基準が組織として統一されていなければ、結局混乱や組織崩壊の原因になってしまいます。

当社ではその判断基準を「ウエルネス」に置くことで、理想の組織ができると考えます。次回のコラムでは、「ウエルネス」という判断基準について触れてみたいと思います。

まとめ

売上が上がる上がらないについては、このコラムだけでは何とも言えないと感じる方もおられるかもしれません。しかし、このような環境が作れれば、辞めない組織となり、まず定着率が明らかに向上します。いままで採用にかけていたコストは確実に減少します。また、少子高齢化のこの時代、人財に辞められるのは相当の痛手です。

・役割がダブルバインドになっていないか確かめてみる
・顧客と関係性構築ができているか振り返る
・顧客の期待値とはどれくらいなのか確かめてみる

まずは上記の3つを試してみてはいかがでしょうか。


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